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第2話 石像エリアを攻略せよ!

 ロビーの階段を下り、一階に戻った後、廊下を真っ直ぐに歩いていく。

「何か起きるんですかね?」

 横にいるドウォルムールに環が尋ねると、彼はただ「分からない」とだけ答えた。

 そこから会話は弾まず、環も何を話したらいいか分からなくなってしまう。

 そもそも、環は色恋沙汰より冒険が好きな根っからの冒険者だ。

 歩きながら、ドウォルムールが口を開く。

「砂の落ち方を見て、時間を上手く配分して進んでいこう。そんなに短くは設定されていないみたいだから、後は展示室がどのくらいあるのか……」

 ドウォルムールは周りを観察しつつ、冷静に状況を整理していた。

 すると、マアリンが答える。

「普段の博物館と変わらないんだとしたら、大きく分けてエリアは五つあるよ。石像、動物、ミイラ、絵画、最後に恐竜。その中に展示室がいくつかある感じだったと思う」

「全部覚えてるんですか?」

「うん、好きだから」

 環は、ギーリムの博物館に行くのは初めてである。

「五つなら、砂が落ち切る前に十分回れそうじゃない?」

 コシが言うと、環は静かに頷いた。

「いつもの博物館ならいけるだろうけど……まだ何が起きるか分からないよ」


 廊下を進んで最初に着いたのは、大きな石像があるエリアだった。

 人の顔を象った大きな石が、奥行きのある展示室の左右の壁に沿って並んでいる。

「ここは、いつもの博物館にもあるよね? 今のところ、変わった点はなさそうだ」

「確かに……」

 マアリンは興味津々という感じで様々なものを見て回っている。

「見て、環さん。この石像、口に矢をくわえてる」

「えっと……そのまま通ればいいんですよ、ね?」

 不安だが、この石像の前を通らないと先には進めない。

「ほら、行こうぜ」

 先にホシが歩き出した瞬間。


―シュッ


 石像から勢いよく矢が飛び、ホシが着ていた鎧に刺さる。

「ぐ……!」

「大丈夫ですか、ホシ!」

「……鎧が守ってくれた」

「これ、当たったら危険だ。毒が塗られているかもしれない」

「毒!? なんつーもん作ってんだよ」

 しかも、先程矢を吹いた石像は、気づけば次の矢を口にくわえている。

 一本攻撃に使っても、矢が消費されるわけではないらしい。

「厄介だな……。矢の動きを見て、避けながら進んでいくしかなさそうだ」

「ですが石像が矢を吹くなら、仕掛けを解除するしかなさそうですね。ドワーフは、動きが鈍いですし」

「ここは俺に任せて」

 コシはスカウト技能を持っているため、罠に関しては得意だ。

 環はコシを信じて、彼の罠解除を見守った。

 悪戯っ子な見た目とは裏腹に、繊細に罠を探していく。

 コシは罠が仕掛けられている可能性が高いと感じた場所に近づいた。

 注意深く周囲を観察していくと、コシは何かに気づき、罠の存在と仕組みを完全に見抜いた。

 その後、コシは罠を解除するために機敏さを発揮した。

 何も言わずに慎重に罠を解除しようとする。

 だが、手が滑ってしまい、思わず罠に触れそうになった。

 それでもギリギリで罠を解除し、ホシは安堵の溜息をついた。


「これで、ひとまずこのエリアは攻略したな」

 ホシのおかげで、全ての石像の罠を解除し、五人は先に進んだ。

「まあ、当然、盗賊だからこれくらいは余裕さ」

「これから、こんなのが続くのかな?」

 ホシとコシが話している。

 マアリンが、それに対して言った。

「裏博物館は魔法の博物館って言ってたから、多分いつもと何かが違うんだと思う」

「魔法なら、もっと感動させるものにしてくれ。ドワーフは魔法に詳しくないがな」

「骸骨の裏館長が環達を酷い目に遭わせようと仕組んでいると思います。環としては、許すわけにはいきませんから」

「ああ、お前の言う通りだな」

「環、砂時計はどんな感じ?」

「……」

 環が砂時計を確認すると、最初よりも確実に砂が落ちてしまっている。

「これくらいでも結構進むんだね。少し休憩したいところだけど、先を急ごうか。時間はこうしてる間にも過ぎていっちゃうからね」

「もうちょっと休憩させてくれ」

 ホシが叫ぶが、ドウォルムールはぐっとハンマーを握りしめた。


「……行くしかないようですね」

 環も二丁拳銃を腰にしまった。

 これから何が起こるか分からない。

 時間をギリギリまで使うよりも、余裕を持たせた方が安心だ。

 環達は休憩をやめて、また進み始めた。

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