top of page

第3話 動物エリアは危険がいっぱい

 次に辿り着いたのは、迫力のある動物の剥製や骨格標本があるエリアだった。

「……ここ、何となく動きそうな気がしますね」

 環はエリアの中でぽつりと呟いた。

 魔法の博物館なので、石像が動いたのと同じように、剥製や骨格標本が動く可能性があると読んだ。

 象に猿と、歩きながら動物達を眺めていると、コシが環達を見て言った。

「ドワーフであっても、物怖じしないんだね」

「……皆さんと同じように、戦えますから」

「凄いな、環」

 このドワーフ達は腕のいい冒険者である。

 環も銃と魔法を使えるため、彼らをサポートしようとは思っている。

 アルカディアでは女性冒険者は珍しくないが、ここまで好戦的な女性はドワーフ達は見た事がないらしい。

 女性のドワーフは家を守る事を重視するためだ。


(警戒心は怠りませんよ)

 環が警戒しながらさらに奥まで進むと、マンモスの剥製が二体堂々と立っていた。

 小さなマンモスの隣にいるのは、見上げるほど大きなマンモス。

「えらい背がちゃいますねぇ」

「この子も成長したら、これくらい大きくなるはずだったんだね」

 環がしばらくマンモスを眺めていると、マンモスに違和感を抱く。

 かつん、とマンモスの近くで音がしたのを、環は聞き逃さなかった。

「気ぃ付けて! こいつ、動きますえ!」

 環が身構えると同時に、マンモスが動き出した。

「なんだ!?」

 マンモスは生き返ったかのように、鼻を揺らして環達を見ている。

 そして。


「パオオオオオン!」

 突然、耳を塞ぎたくなるほど大きく鳴いた。

「うわぁっ!」

「歩き出したぞ!」

「パオオオオオン!」

「案の定でしたね! みんな、迎え撃ちますよ!」

 環は二丁拳銃を構えて、巨大なマンモスに狙いを定めた。

 彼女は素早く引き金を引き、二つの弾丸がマンモスの皮膚を貫いた。

 マンモスは痛みに吠えたが、まだ立っていた。

「いくよ」

 ホシは短剣を手にして、マンモスに飛びかかった。

 ドワーフらしからぬ素早い動きで、マンモスの隙を突いて二回切りつけ、かなりのダメージを与えた。

 マンモスチャイルドはコシに向かって突進するが、ホシが仕掛けた罠に足を引っ掛けて転んでしまった。

「どうだ」

 ホシがガッツポーズをした後、マアリンは呪文を唱え、光の力をマンモスチャイルドの胸に当てた。

「どぉりゃああぁぁぁぁっ!」

 ドウォルムールは豪快に斧を振り上げて、マンモスに一撃を加えた。

 マンモスの回避をかすめて、斧がマンモスの首に食い込み、マンモスは咽喉を切られて倒れた。


「一匹、倒しましたよ!」

「よし、その調子だ!」

 コシはハンマーを振り下ろして、マンモスチャイルドに攻撃した。

 しかし、マンモスチャイルドにかわされて、攻撃は空振りしてしまった。

 ホシは短剣でマンモスチャイルドを再び攻撃した。

 マンモスチャイルドの防御を破り、短剣がマンモスチャイルドの腹に刺さり、マンモスチャイルドは苦しむ。

「すまない、正当防衛だ」

「パオオオオオン!」

「わおっ!」

 マンモスチャイルドはドウォルムールに反撃した。

 ドウォルムールの腕に噛みついたが、大したダメージは与えられなかった。

「これで終わりだ!」

 コシはハンマーでマンモスチャイルドに最後の一撃を加えた。

 マンモスチャイルドの頭にハンマーを叩きつけると、マンモスチャイルドは頭蓋骨が砕け、戦闘不能になった。

 これにて、戦闘は終了した。


「襲ってくる以上、こうするしかありませんでした」

 倒れたマンモスとマンモスチャイルドを見て環が言う。

 彼らに悪意はないが、襲ってくるなら迎え撃つしかなかったと思った。


「変にマンモスに気を使っても、彼らは動物だからな。俺達の都合なんて、知った事ではないだろう」

「せめてこの場に魔物使いがいれば、よかったんだけどな」

 ホシとコシがそう呟き、一行は先に進むのだった。

bottom of page