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第7話 絵画エリアの戦闘狂

 プラネタリウムを抜けて、たくさんの絵画が飾られているエリアにやってきた。

「ここはいつもの博物館と変わってない気がするね」

「……?」

 環がここに来るのは初めてである。

 ここには、アルカディアで有名な絵画のレプリカが並んでいる。

「俺達は一応、本で読んだ事はある」

 コシはホシに尋ねる。

「おお、ラ・ジョコンダだろ? 覚えてるぞ」

「ドワーフも美術は勉強する」

 二人が話しているのを聞きながら、環はマアリンに言った。

「環は、戦闘以外にも勉強したいです」

 有名な画家が描いた絵がたくさんある。

 薄暗い背景の上で、微笑んでいるように見える髪の長い女性。

「本当はゆっくり眺めていたいところなんだけど、やっぱり時間がね……」

 ドウォルムールが惜しそうに呟いた瞬間……。


「それなら、あなた達も絵画になればいいのよ」

 絵に描かれていた女性、ラ・ジョコンダが突然、声を発した。

「わぁ!」

「喋れるのか?」

「ええ、ここの絵画の中で私だけが喋れるわ」

「すごい……」

 環は思わず感心してしまった。

 しかし、魔法がかかっているという事は、また環達に何かしてくるのかもしれないと環は警戒した。

「あそこに展示されている、真っ白なキャンバスが見えるでしょう?」

 ラ・ジョコンダの視線の先にあったのは、何も描かれていない五つのキャンバスだった。

 環は警戒しつつも困惑する。

 するとマアリンが指を差し、声を上げた。

「僕達の名前が書かれてる!」

「なんやと!」

 よく見てみると、絵画のタイトルが書かれるはずのところに、環達の名前が書かれていた。

「あそこに描かれるのはあなた達よ」

「いけずな絵画でしたね!」

 環が銃を抜いた瞬間、白かったキャンバスに、鉛筆の線が現れた。

 シャッ、シャッと音を立てながら浮かび上がってきたのは……人の輪郭だ。

「なんか環、すげぇ服着てるぞ!」

「なんやと? けったいやなぁ」

 それは、メイド服だった。

「可愛い服で描いてもらえて、嬉しいでしょう? せっかく飾るなら、華やかじゃなくちゃね」

「愚か者! 環達を作品にするなんて!! あんたは倒れとぉくれやす!!」

 怒り狂った環は、銃を乱射して、絵画に穴を開ける。

 絵画は、その中からドウォルムールに向かってインクが飛んでくる。

 三回も狙ったが、一回はドウォルムールがかわした。

 残りの二回は命中したが、インクが弾けるだけで大したダメージにはならない。

 環は二丁拳銃を構えて絵画を撃つが、インクのバリアに弾かれてしまう。

「……しぶといですね」

 環は悔しそうに銃口を下げた。

 口調が元に戻ったため、怒りはだいぶ治まったようだ。

 マアリンは集中力を保つために深呼吸をして、絵画を狙いながら呪文を唱える。

「Balle d'esprit de divinite!」

 マアリンの杖から光の弾丸が飛び出し、絵画に命中した。

 絵画はガードしようとしたが、光の力に耐えられず、少しダメージを受けた。

 ホシは短剣を手にして絵画に突進し、三回も切りつけたが一回は自分の失敗で空振りした。

 残りの二回は絵画に当たったが、キャンバスを切り裂くだけで、効果は薄かった。

「まったく、環の言う通り、しぶといなぁ」

「だったら力押しでやるまでだ!」

 ドウォルムールは斧を振り上げて絵画に叩きつけたが、絵画はバリアで攻撃を防いだ。

 コシはハンマーを持って絵画に振り下ろし、何とかダメージを与える。

 ドワーフらしい力強い動きを見た環は頷いて、二丁拳銃を構える。

「これで終わりです!!」

 環は素早く銃弾を補充して、再び二丁拳銃で絵画を撃った。

 弾丸が絵画に突き刺さり、大きな穴を開け、絵画は崩れ落ちて、動かなくなった。


「……強すぎ」

「カッコイイ姿なら、環さんにたくさん見せられるからと思ったが」

 コシはそう言って笑った。

 環の服は、いつの間にかメイド服から元の戦闘服に戻っていた。


「時間は後、どれくらいかな?」

 話が終わると、ドウォルムールが尋ねる。

 首から提げている砂時計を見ると、砂はほとんど下に落ちてしまっていた。

 もうすぐ、全ての砂が落ちてしまう。

「急ごう」

 マアリンの記憶通りなら、次の恐竜エリアで最後のはずだ。

 絶対に皆でここを脱出し、ドワーフを保護すると環は誓った。

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