第10話 偽りの空
プシット達はサイト4に行く前に、解析を終えたばかりのオルタナログを読んでいた。
~新たな空~
地下を新たな地球にしたとはいえ太陽の光はなく、大空を見る事はできなくなっていた。
そんな時、オルタナの科学者の一人が、イカの体液から液晶を生成した。
その液晶は生物の発する微弱な電気信号に反応し、色を自由に変える事ができた。
それに目を付けた科学者は、考えを反映する「夢の液晶」を作り出す事に成功。
夢の液晶の量産が進むと、それはオルタナの内壁を覆っていった。
その後、オルタナはかつて地上で目にしていた光景を映し出した。
それを見た人々は、様々な思いで溢れていた。
地下に囚われてから四半世紀が経過し、人類は再び、喜んで空を見た。
たとえ、それが偽りの空であっても。
「つまり、この空は、夢の液晶が作り出した偽物の空だったんですね」
「プシット、偽物だなんて人聞きが悪いよ」
「地下で暮らす人にとっては立派な空だからね~」
オルタナは地下なので、太陽の光は届かない。
大空が何なのかも、分からない。
しかしイカの体液から作り出した結晶により、人々の思いが具現化した空が現れた。
つまり、この空は人々が望んだ理想の空なのだ。
「オルタナの人達は、夢を見ていたんですね。明るい光が満ち溢れた、青い空という夢を」
「ああ……取り返しのつかないところまで来てしまった人類の、せめてもの抵抗だろう」
人類が過ちに気づいた時には、既に地上には行けなくなっていた。
絶望した人類は、夢の結晶という形でかつての地球を取り戻そうとした。
それがいつか覚める「夢」であったとしても、人類はそれに縋るしかなかった。
「ニンゲンは……なんて弱い生き物なんでしょう。こうなる事は、分かってなかったんですか?」
「危機に気づいたニンゲンは少なからずいただろう。それを防ぐために行動していた者もいたはずだ。だが、結果はこうだ……」
「……博士はオルタナの人達を悲しんだでしょうね」
博士はクローンの創造やタルタル総帥の作成、さらに兵器を生み出した事に対して「罪に塗れた」と言っていた。
もし博士がオルタナに関わっていたら、きっと同情していたかもしれない。
「まあ、今はジジィを探すのが先だ。早くサイト4に行くぞ」
「……はい」
行方不明のアタリメを探さなければ話にならない。
プシット達はオルタナログを読み終えた後、サイト4に繋がるパイプの中に入った。
こうしてプシットらNew!カラストンビ部隊は、サイト4「うめたてドリームランド」に辿り着く。
海には船らしきものが浮かんでおり、倉庫や箱があちこちにあって散らかっている感じだ。
パイプの中から見渡していると、セピアが何かを発見する。
このサイトで最も高い場所にある、大きな薬缶だ。
「高台に強い反応あり、確認されたし」
あの薬缶の中に、もしかしたらアタリメが捕まっているかもしれない。
アタリメは、通信の時に真っ暗で狭い部屋に閉じ込められたと言っていた。
その部屋の特徴が一致するならば、アタリメはここにいるだろう。
「その前に、オルタナの薬缶を攻略しなきゃですね」
そう言って、プシットはラクスにケバインクを食べてもらいながら、薬缶を攻略していく。
・ようこそ、世界が愛したベイエリアへ。
・心、弾む。オルタナは今日も元気です。
・坂を上り、川のせせらぎに耳を澄ます。
・芸術。この街の夜景を、人はそう呼ぶ。
・Charge&Keep 革新をまとい、伝統を継ぐ邸。
・見つけた。「駅直結」という未来への近道。
・さあ、飛び立とう。空にそびえる理想郷へ。
・私という歴史を刻む、和の空間。
サイトも後半まで進んだため、難しい薬缶も多く見られた。
特にプシットが苦戦した薬缶は、この四つである。
・「引き算」とは「美しさの足し算」である。
「お手本通りに壊すのは、難しいなぁ」
的確に箱を壊さないといけないため、ボトルガイザーで慎重に箱を壊していく。
かなり時間がかかったものの、何とか「イルカ」を完成させる事ができた。
・押し寄せる価値と向き合う、本質と技芸の舞台。
「変なところに飛ばないでください! あぁもう!」
箱が色々なところに飛んでいくため、何回か挑戦する羽目になってしまった。
・機を見るに、美。
「ダメ風船を壊さないように……時間をかけすぎないように……」
×が描かれた「ダメ風船」を壊さないよう、緑の風船だけを壊すミッション。
遅すぎず、速すぎずのタイミングを、掴み取るまでに数分はかかった。
・線を引く、道ができる、やがて街になる。
「あれ? これってもしかして……」
制限時間があるため少し焦ったが、完成した絵を見て、プシットは拍子抜けした。
「ラクスも頑張りましたね」
こうしてケバインクの掃除と薬缶の探索が終わり、いよいよ最大の薬缶に突入しようとした。
プシットはラクスを労いつつ、真剣な表情で次の戦いに備える。
「この先に、アタリメがいて、ペンダントがあるといいのですが……」
「そういえばそうだったね」
プシットはすりみ連合が盗んだペンダントを取り返そうとしていた。
あれがなければ自分の命を守る事ができないため、一刻も早く取り返そうと決めた。
「いくらすりみ連合でも、やってはいけない事があるという事を教えてあげましょう!」
そう言って、プシットは薬缶の中に乗り込んだ。