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第11話 気高き刃~フウカ

「そこなお方、待ちなはれ」

 薬缶の中でプシットを待っていたのは、タコの女性・フウカだった。

 彼女の手にペンダントは握られていなかった。

「あなたは……ペンダントを……」

「ペンダント? はて、何の話かえ?」

「とぼけないでください。ペンダントを盗んだのはすりみ連合だって事、分かります。一体、誰がペンダントを……」

「ウチは持っとらんよ。せやけど……」

 微笑んでいたフウカだったが、しばらくすると微笑みを消し、扇を構える。

「喧嘩を売るっちゅうなら、ウチが礼儀っちゅうもん教えたる! おいでやす、先生!」

 フウカがそう言うと、どこかから巨大な鮫が現れ、水しぶきならぬインクしぶきを上げながらプシットの前に姿を現す。

 その鮫にフウカが軽々と飛び上がって乗ると、まるでバイクを駆るように鮫に騎乗した。

「鮫……!?」

「ほな、フカすで!!」

 フウカはジェット付きの鮫を駆ると、インクの海の中に飛び込んだ。


「うっ!」

 驚く間もなく、鮫は飛び上がってインクの斬撃をプシットに放つ。

 プシットは何とか攻撃を避けながら、地面をインクで塗っていく。

 斬撃が通った先には相手のインクがあり、そこをプシットはインクで塗り返す。

 絶対に攻撃できるチャンスがあると、プシットはフウカの攻撃を避けていった。

 すると鮫がインクの海に潜り、鰭を出しながらプシットの方を追いかける。

 その鰭がプシットに近づくと動きは止まり、プシットを食べようとするが瞬時に攻撃を避け、ヒーローシューターで反撃した。

「もしかしたら、飛び出た時がチャンスかも」

 プシットは鮫が飛び出す瞬間を見極めるベく、精神を集中してフウカの動きを見た。

「ツッコむで、先生~!」

「当たりませんよ!」

 プシットは突進した鮫を避け、インクで塗り返す。

 そしてヒーローシューターで攻撃するが、相手の体力はなかなか減らなかった。

「こいつ、全然攻撃が効きません。どうすればいいんですか?」

「……分析している。攻撃に耐えつつ、反撃せよ」

「はいっ、司令!」

 セピアが分析している間に、プシットはフウカの攻撃を避けて反撃する。

 地面にインクを塗って陣地を広げながら、セピアの分析結果を待っている。

 しばらくして、セピアの声色が変わった。

「鮫の弱点が判明した。あの口の中にコジャケを投入せよ」

「タコワサの時と同じですね。……今です!」

 突進する鮫の口に、プシットは冷静にラクスを入れる。

 すると異物が入ったと感じたのか、鮫の動きが止まり、打ち上げられてフウカが振り落とされる。

「今です!」

 その隙に、プシットはフウカにヒーローシューターを乱射し、彼女をキルした。


「えらい元気がよろしおすなぁ……」

 キルから復活したフウカは、扇を持ちながら鮫に乗り直す。

 彼女の表情に微笑みは見られなかった。

「せんせっ! しっかりしとくれやす!」

 フウカが気絶した鮫を扇でつつくと、気絶した鮫は飛び上がってインクを撒き散らす。

「キッチリお仕置きしたってや!」

「……強そうですね」

 フウカの乗る鮫が咆哮を上げ、プシットは圧倒される。

 そして再び、フウカと鮫はインクの海に潜った。


「ここからが本番や!」

 フウカはインクの斬撃を飛ばし、真っ直ぐ塗る。

 対し、プシットは冷静に地面を塗りながら、鮫が出てくるのを待っていた。

 しばらくすると、周りにインクの竜巻が吹き荒れ、フウカと鮫はそのうちの一つに乗った。

「空中でも暴れさせてもらいますえ!」

 フウカと鮫は次々にインクの竜巻に乗っていく。

 そして最後の一つに乗ると、鮫の両端からジェット噴射が起きる。

「行くで!」

 鮫は口から巨大なインクの衝撃波を放った。

 あれをまともに食らえばひとたまりもないだろう。

 プシットは全力でインクの中に潜り、鮫が放ったインクの衝撃波を避けた。


「危なかった……」

「あんさん、なかなかやるなぁ」

 強力な攻撃を避けたプシットをフウカは評価する。

 しかし、これだけで負けを認めるほど、彼女は諦めの悪い人物ではなかった。

「インクの竜巻を使い、攻撃をするのか……。よく周りを見る事だな」

 セピアの言う通り、周りを見なければあっという間に倒されてしまう。

 プシットは落ち着いてフウカの攻撃を避けていく。

 どんなに強力な攻撃でも当たらなければ無意味だ。

「そこです!」

 プシットは鮫が口を開けた瞬間、ラクスをその口の中に入れた。

 鮫は地面に叩きつけられ、プシットは鮫にヒーローシューターを連射し、フウカを鮫から叩き落として彼女をキルした。


「……んもぉ~~~、なんやねんアンタ!!」

「せめて、ペンダントの場所は言ってください」

 復活したばかりのフウカに、プシットは鋭く言う。

 彼女がペンダントを持っていないならば、別の人物がペンダントを持っているはずだから。

「鋭いねぇ、あんさん」

 フウカは冷たい声で、復活した鮫と共に再びインクの海に潜った。

「本気でフカすで~!!」

 そう言ってフウカはインクの斬撃を飛ばした。

 プシットは攻撃を避けながら、ヒーローシューターがギリギリ届く位置で撃っていく。

 今度は竜巻を作ってそれに乗った。

 プシットは落ち着いて辺りを見渡し、フウカの攻撃を避けようとする。

「これならどうどす!?」

「当たりませんよ!」

 攻撃を避けようとしたが、なんと二発目と三発目が飛んできた。

「……っ! 本気ですね」

「ウチは本気どすえ」

 攻撃を避け切れず、インクが掠ってしまう。

 プシットは自分が塗ったインクの中に潜り、受けたダメージを回復していく。

「けれど……攻撃をした今なら!」

 そう言ってプシットは口の中にラクスを入れ、鮫を地面に打ち上げてインクで塗った。

 ある程度塗った今なら、フウカを倒せるチャンスだ。

 鮫にとどめの一撃を放つと、フウカは鮫から落ちてしまい、目を回す。


「あなたに恨みはないですが……覚悟!!」

 そして、プシットのヒーローシューターにより、ついにフウカは戦闘不能になった。


「今回はこれくらいにしといたるわ……」

 敗北したフウカは、鋭い目でプシットを睨む。

 ウツホと同じく、彼女も往生際が悪い人物だった。

「これですりみ連合に勝ったやなんて思わんといてや。ほな、ここは退かせてもらいま……あっ」

 フウカが煙玉で撤退しようとすると手が滑り、地面に落ちるとインクごと大爆発を起こし、鮫ごとフウカは空に飛んでいった。


「鮫は大きかったけど、僕の敵ではありませんでしたね。でも、ペンダントは見つかりませんでした」

「とりま、いただける物はいただくっしょ」

「そうですね」

 プシットはたくさんの歯車がついたガラクタを回収し、その場を後にするのだった。

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