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第7話 輝く器~ウツホ

 プシットはアタリメを見つけるため、反応が強い薬缶の中に突入した。

 この中にアタリメはいるのだろうか……プシット達は真剣な表情をしていた。


《この先は 関係者以外立ち入り禁止です》

「そんな事は僕には関係ありません。通しなさい」

 プシットはイルカの言葉を無視して装置からヒーロー装備を取り出して装備する。

 ペンダントとアタリメを取り戻すために。


『奥の方に強い反応があるよ! じーちゃんかも!』

「それならいいんですけどね」

 プシットは微笑みながら、ジャンプポイントで目的地に勢いよく着地する。

 空中にはたくさんのテレビが浮かんでいて、地面は円形でまるで闘技場のようだった。

「待つんじゃー!」

 プシットが着地すると、テレビに映像が映り、黄色いイカの女性・ウツホの声が聞こえてくる。

 そしてプシットの前に現れたウツホは、挑発するように二本の指をプシットに向けた。

「お前さん、なかなか腕が立つと見える! ワシらの手下にならんか? そしたら、お宝を半分くれてやってもよいぞ?」

「お断りします」

 どうやらウツホはプシットをすりみ連合に勧誘しようとしているらしい。

 しかし、プシットは彼女の誘いに首を横に振った。

 大切なペンダントを盗んだ犯人を、許すわけにはいかないからだ。

「なるほど、流石はバンカラもんじゃな。確かにお宝を取ったのはワシらじゃ。じゃが、返すわけにはいかん! イエローウツボ、カモン!」

 そう言って、ウツホは笛を取り出して演奏し、巨大なタコツボックスと共に三匹の黄色いウツボが現れた。

 ウツホは回転するタコツボックスの上に乗り、たくさんのウツボを操作する体勢に入った。


「そぉーら……祭りじゃ!!」

「これが、ウツホのブキですか?」

 このウツボがウツホのブキだと知ったプシットは、油断大敵とヒーローシューターを構える。

 彼女を懲らしめれば、ペンダントの在処が分かるかもしれないと思ったプシットはまず、自分の周りをインクで塗る。


「三の舞! ウツボ百景!!」

 ウツホの掛け声と共にたくさんのウツボが現れ、プシットの方を向いて襲い掛かろうとした。

「そこです!」

 プシットはヒーローシューターでウツボを撃ったが、何故かあっさり消えてしまった。

「手ごたえがない……? もしかして偽物?」

 次のウツボを撃つとまた消えた。

 どうやら本物のウツボは、偽物のウツボに紛れ込んでいるらしい。

 落ち着いて観察し、本物のウツボを探した。

「そこですね!」

「うぎゃっ!」

 プシットが本物のウツボに連射すると、ウツボはウツホの身体にぶつかる。

 どうやら、ウツホが操るウツボを倒すと、彼女のところに飛んでくるようだ。

「本物のウツボは……これと、これですね」

 続けてプシットはヒーローシューターで残り二体のウツボを撃ち、ウツホに飛ばして攻撃した。

「こ、こら! やられたからってぶっ飛んで戻ってくるでない!」

 三体のウツボがウツホに命中すると、タコツボックスは勢いよく回転しながら止まる。

『今だ、あの箱を塗って登れ!』

「はい、司令!」

 プシットはセピアの指示で箱を急いでインクで塗り、イカの姿に戻って箱を登り切る。

 箱の上には、気絶したウツホの姿があった。

 プシットは気絶したウツホに、ヒーローシューターの連射攻撃を行った。

「僕は……手加減しませんよ」

 ペンダントを奪ったすりみ連合は、まず、キルしなければ話にならない。

 プシットの戦意は徐々に上がっていった。


「ニヒヒ! やりよるな!」

 やがてリスポーン地点から復活したウツホは、不敵な笑みを浮かべながら笛を構える。

「ワシの本気、見せようかの!」

 ウツホがそう言って笛を演奏すると、タコツボックスからさらにたくさんのウツボが飛び出した。

 その唸り声は、先程よりもさらに恐ろしい。

「とくとご覧あれじゃ! 二の舞、ウツボ大渦!!」

「……っ!」

 タコツボックスが回転し、その中から次々にウツボが飛び出す。

 猛スピードで、渦を描くように泳いでいった。

「速い……!」

 あれを食らったらひとたまりもない。

 しかも、本物と偽物が混ざっており、さらにどちらもそのスピードは速い。

「すり潰せぇーい!!」

「……させません!」

 冷静に状況を見ながら、プシットは本物のウツボをシューターで撃つ。

「ぎょえ!?」

 三体全て撃ち返し、箱の方に勢いよく三体のウツボが飛んでいき、箱は勢いを失い止まった。

 そして箱を登り、気絶したウツホを再びキルした。


「賢く立ち回るのが僕の立ち回りです。そろそろ、負けを認めてくれませんかね」

「フン! そう言われて諦めるワシではない! もーどうなっても知らん!」


 さらにたくさんのウツボが箱の中から現れて威嚇、ウツホも復活して笛を吹く。

「行くぞ全力フルパワー! 覚悟するのじゃ!!」

「……行きますよ!」

「終の舞! ウツボ大転身!!」

 ウツホはプシットを倒すべく最終奥義を発動した。

 大量のウツボが群れを成し、まるで大きな魚のようにプシットに襲い掛かる。

 だが、こんな事をしているという事は、恐らくは相手の余裕はないだろう。

「焦りは負けの元ですよ」

 プシットは焦らず冷静に、ウツボを撃ち続ける。

 数が多いので本物にはなかなか当たらなかったが、冷静さを忘れずにウツボを攻撃する。

 床を塗りながら、落ち着いて攻撃を避け、スペシャルを溜めていく。


「行きます!」

「ぐわーッ! バランスが!!」

 スーパーチャクチにより一気にウツボが倒れ、タコツボックスはバランスを崩して止まる。

 急いでタコツボックスを塗り、プシットは登る。

「今だ!」

「これで、終わりです!!」

 そう言って、プシットは全力でヒーローシューターを連射し、ウツホをキルした。


「ぐぅ~~~! まさか、ここまでのウデマエとは……」

 ようやくウツホは戦闘不能になる。

 ウツホはふらつきながら、プシットを見上げた。

「……ペンダントはどこにありますか?」

「そんなものは知らん! だが……これですりみ連合に勝ったと思うなよ。覚えてやが……ぬわぁぁぁぁぁっ!」

 ウツホは往生際が悪く、煙玉を取り出すと……何故か、箱ごと自爆して吹っ飛んでいった。


「よくやったぞ、プシット」

「……僕の勝ち、ですね」

 セピアからの誉め言葉を受け取ったプシットは、目の前に現れた謎の機械を見やる。

 それは、自分の背丈以上に大きな大きなものだ。

「どうやら、これに反応していたようだな」

「使えるかもしれんし、とりまいただいとこ」

「……はい」

 プシット達は、ウツホが残した(?)機械をオルタナに持ち帰ったのだった。

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