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第9話 コジャケの秘密

「それじゃ、三つ目のサイトに行く前に、オルタナログを見ましょうか」

「だな、プシットも順調に攻略したようだし」

 プシット達は解析を終えた、二つ目のオルタナログを見ていた。


 ~文明の再現~

 生き残った人類は、同じ過ちを繰り返さないよう、特に聡明な科学者達をリーダーとした。

 科学者達は、シェルターとして大空洞を整備し、その地をかつての地球に似せるために第二の地球「オルタナ」と名付けた。

 3Dプリントなどの最新技術を用いて、地上に存在した物の複製を作り、オルタナに文明を再現した。

 さらに、自分達の知識や技術が二度と失われないように、強固な情報管理システムの構築に着手した。

 その名は「Intelligent Recording Computer of Alterna」。

 訳すと「オルタナの知的録音コンピューター」、さらに頭文字を取って「イルカ」。

 これはオルタナで行われた活動を自動でアーカイブ化する、自律思考型記録コンピューターだった。


「やはり……人類は、ここにいたんですね……」

 環境汚染や海面上昇で地上を失った人類は、住む場所を地下に移した。

 それはまるで、100年前の大ナワバリバトルでタコ達が地下に住んだようなものだった。

 タコは仕方ないのだが、人類は自分達の過ちで二度とあの温かい陽の光を見る事ができなくなってしまったのだ。

 人類が犯した罪を、プシットは痛いほど思い知る。

「でも、結局人類は滅亡したんですよね。どうしてでしょうか?」

「それは分からないが、オルタナログを読み進めれば分かるだろう」

「そうですね」

 戦争で人類は滅んだはずなのに、人類は確かに生き残ってオルタナに住んでいた。

 それならば何故、今のオルタナに人類はいないのだろうか。

 次のサイトのオルタナログを調べれば、人類滅亡の真の原因が分かるかもしれない。

「では、次のサイトに行こう」

「行きましょうね、ラクス!」

 そう思ったセピアは、プシット達を次のサイトに導く準備をした。


 こうして四人と一匹はサイト3「ながいきヤングニュータウン」に辿り着く。

 ケバインクは多く、周りは氷で覆われていて歩きづらかったものの、ラクスによってある程度掃除された。

 それでも滑りやすい事に変わりはなく、プシットはジャンプしながら探索した。

「ねえ、疲れたりしない?」

「まあ、言われてみれば……」

「ケバインクに触らなきゃ大丈夫っしょ」

 楽天的なホタルの言葉に、プシットはやはり、自分はイカらしくないかもしれないと思った。


 ・その丘、上品な喧噪をまとい。

 ・大空に住まう。私は自由を駆ける鳥。

 ・ヌリホイールが開拓する、無限大の未来。

 ・誰にでも、完璧にこだわりたいときがある。

 ・時代に流されない「特別」を、いつも大切にしたい。

 ・見果てぬ贅を、追い尽くす。

 ・敷かれたレール、何色に染めるか。


「そういえば、僕のラクスはどうして、あんな量のケバインクを食べるんでしょうか」

 一通り薬缶を探索した後、プシットはラクスの謎について考える。

 身体は小さいのに、大量のケバインクを一口で食べてしまうラクスに、プシットは頼りにしながらも疑問に思った。

「……プシット、探索の時に情報は見つからなかったか?」

「司令、情報……ですか?」

「その中の『コジャケ』というページを見てほしい」

「えっと……」

 プシットは集めた情報をセピア達と共に見る。

 どうやら1万匹に1~2匹ほどの割合で、「ケイジ」という特別なコジャケが発見される事があるらしい。

 通常のコジャケは生まれた場所の近くで育つが、ケイジは別の地方で生まれたコジャケが、ビッグランの際、元の群れに戻れず迷い込んでしまったものだという。

 長旅による空腹から、あらゆるものを食べてしまうらしい。


「もしかして、僕のラクスってそのケイジ?」

「だろうな、ケバインクを食べ尽くすその食欲、ケイジ以外にはあり得ない」

「……」

 プシットはラクスが特別なコジャケ「ケイジ」だと初めて知った。

 ラクスはそんな事は気にしないように、「な~に~?」と首(?)を傾げていた。

「そんなコジャケが僕と一緒にいるなんて……やっぱり僕は、選ばれた存在でしょうか」

「ふっ、大袈裟だな。まあ、オルタナは危険だからキミに任せているのだが」

 オルタナには触れるだけで毛だらけになるケバインクがたくさんあり、普通のイカタコは近づけない。

 だから、プシットがNew!カラストンビ部隊としてこのオルタナを調査しているのだ。

「タコに毛が生えたのも、ケバインクのせいでしょうか」

「十中八九その可能性は高い」

 プシットは薬缶を探索する時、数々の毛が生えたタコを相手にしていた。

 海洋生物に毛を生やすものといえば、ここではケバインク以外はあり得ない。

 そういえば、とプシットはタコワサ将軍が戦う前に言っていた事を思い出す。

 最近、しもべ達が失踪していたらしい。

 毛が生えたタコを見かけたのはそれより前か後か、プシットやセピアには分からなかったが……。


「とにかく、オルタナを探索して、アタリメを探しに行きましょう」

「……オオデンチナマズも忘れるなよ」

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