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第1話 闇医者・レイモンド

 闇医者。

 それは、正式な医師免許を持たない、社会から認められない医者。

 何物にも囚われないといえば聞こえは良いが、逆に言えば、法に守られない医者でもある。

 故に、闇医者になる事は、自己責任でもある。

 腕が良くなければ、自分で身を守れなければ、闇医者になるには至らないだろう。


 今回はそんな一人の闇医者が、ある一つの脅威に立ち向かう物語である。


「……よし、これで大丈夫だ」

 とある町の路地裏。

 片方だけが長い前髪の青い短髪に赤い瞳の人物が、怪我をした子供を治療していた。

 何者かの攻撃によって傷ついたらしい。

 それなりに複雑な怪我の仕方だったが、レイモンドにかかれば簡単に治せるのだ。

「……何があった」

 無造作に子供に聞くレイモンド。

 子供は恐怖ですぐに縮こまってしまう。

 せっかく治したのに、とレイモンドは心の中で悪態をつくが、文句は言わないともう一度言い直す。

「霊が……襲い掛かって……」

 なるほど、とレイモンドは呟いた。

 どうやらこの子供は、幽霊に襲われて怪我をしてしまったらしい。

 幽霊は物理的な攻撃をあまりしないので、襲われた余波で怪我でもしてしまったのだろう。

 普通の子供には幽霊は見えないはずだが……。

「分かった、オレが何とかしよう。それで、その幽霊はどこにいるんだ?」

「……あっち」

「分かった」

 レイモンドは、子供が指差した方向に、急いで向かっていった。

 この子供を傷つけた幽霊を、放っておくわけにはいかない。

 それどころか、他の子供もその子供のように怪我をしてしまう可能性がある。

 そうしたら自分の仕事が増えすぎてしまうだろう。

 自分には幽霊と渡り合う力はなく、持っているのはメスを始めとした医療器具だけ。

 それでも、彼は子供を助けるために、その幽霊に挑む事を選んだ。


「子供が理不尽に傷つけられるわけにはいかない。オレが必ず、阻止してやる……!」

 レイモンドは医療器具が入ったカバンを見る。

 都市伝説から町を守るために、レイモンドは今、戦う事を決めたのだ。


 その頃、とある町では、黒いフードの少女と、青い傘を差した男が「浮いていた」。

 その少女には顔がなく、普通の人が見ると正気を失ってしまうだろう。

「さて、ヒミツさん。この町に……呪いを撒きましょう……」

「……」

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