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第4話 脱出の方法

 鬼の祠に捕らえられた有栖達は、脱出するために牢屋を調べていた。


「ここから脱出すると言っても、武器を持ってないオレ達は鬼から逃げるしかないよな。まあ、それが鬼ごっこなんだけどな」

「それでも、武器は必要よ。ほら、ここに何かある」

 有栖が指差した先には、石が四つと手頃な棒が一本見つかった。

「武器は章吾が持って」

「あ、ああ」

 有栖は章吾に手頃な棒を渡した。

「さあ、脱出するわよ」

「でも、どうやってここから出るんだ?」

「あの人がくれた鍵を使おう」

 そう言って、孝司は鍵を使って鉄格子を開けた。

 これで、まずは牢屋を脱出する事はできた。


(どうやらあの鬼は、向こうにいるみたいね)

 二匹の馬頭鬼は、待機所の椅子に座って、何かのゲームをしていた。

 この部屋には、小さな机がいくつか置いてあり、机の上には紙が一枚置いてある。

「とりあえず、あの紙を盗まなきゃ」

「でも、向こうには鬼がいるんだぞ」

「大丈夫よ、こういう時のために私は魔法を覚えたんだから」

「だから、魔法って……」

 有栖と章吾は小声で作戦を話している。

 馬頭鬼に不意打ちして、気絶した隙に紙を読むのが有栖の具体的な作戦だ。

「えー、不意打ちなんてオレには」

「静かにして! ……みんな、忍び込むわよ」

 有栖は和也の口に手を当てた後、ゆっくり、ゆっくりと、待機所に忍び込む。

 和也、章吾、孝司と、三人の男子は音を立てずに忍び込む事に成功した。

 後は有栖だけだが……。


―ガタッ!

「!?」

 有栖が傍にあった机にぶつかってしまい、大きな音を立ててしまう。

 その音に気付いた馬頭鬼が、振り返った。

 見つかってしまった。

「うう、私とした事が……」

「失敗は誰にでもある事。金谷さんが悔やむ事じゃないよ」

 孝司は有栖を励ましたが、馬頭鬼は有栖達を逃がさないつもりだ。

 ぶんぶんと槍を振り回し、有栖達を威嚇する。

「しょうがない……やるしかない!」

 孝司は近付いてきた馬頭鬼を石で殴る。

 ギリギリで当たり、和也も追撃しようとするが、馬頭鬼は槍で和也の攻撃を弾く。

「ヘーアー・ヌーンアリフ」

 有栖は呪文を唱え、人差し指を馬頭鬼に向けると、酸の球体が馬頭鬼を包み込んだ。

 何もないところから酸が飛んだのを見て、和也と孝司は呆然とした。

「これが魔法、なのか……?」

「凄い……」

「危ない!」

「「うわっ!」」

 有栖が止めようとするが間に合わず、和也と孝司は槍で叩かれる。

「はぁあああーっ!」

 章吾は高く飛び上がり、馬頭鬼の頭を棒で思いっきり殴った。

 攻撃はクリーンヒットし、一匹の馬頭鬼は倒れた。


「よくやった、章吾! オレ達も続くぞ!」

「うん!」

 和也と孝司はもう一匹の馬頭鬼を石で気絶させようとするが、かわされる。

「それっ!」

「ヘーアー・ヌーンアリフ」

「うおっ、それが魔法か?」

 章吾は棒、有栖は魔法を使って馬頭鬼を攻撃する。

 すると、馬頭鬼が章吾目掛けて槍で殴った。

「ぐああぁぁぁぁぁっ!」

 重傷を負った章吾はふらつくが、何とか気合で立ち上がる。

 幸い、急所を打たれていなかったため、出血はしていなかったが、体力は危険範囲だ。

 章吾の姿を見た有栖はぐっと唇を噛み締める。

「まずいわ……早めに決着をつけないと」

 和也と孝司も、有栖の焦りを見て頷き、思いっきり石を振りかぶったが、当たらない。

 章吾は何とか馬頭鬼の攻撃をかわし棒で反撃する。

「ヘーアー・ヌーンアリフ」

 有栖は酸の魔法で馬頭鬼をさらに弱らせる。

「たぁぁぁぁっ!」

 和也は思いっきり石を振りかぶり、馬頭鬼の頭にクリーンヒットさせる。

 その一撃を食らった馬頭鬼は、ふらふらした。

「もう少しだ……これで、もう、逃げる必要はない」

 章吾はふらつきながらも棒を構え、瀕死の馬頭鬼目掛けて棒を振り下ろした。

 馬頭鬼は章吾の攻撃を受け、戦闘不能になった。


「さあ、あいつらが起き上がる前に、そこにある紙を見ましょう」

「うん」

 有栖達は急いで机の上の紙を見た。

 そこには、こんな情報が汚い言葉で書かれていた。

 読みにくかったが、有栖は何とか要約して話した。


 ・女性はこの部屋を出て左手のところの丁字路を右に曲がった先の部屋にいる。

 ・その部屋の入り口には罠が仕掛けられている。


「罠か……鬼ならそうすると思ったわ」

 有栖は当然とでもいうような態度で言った。

 昔は人間と真っ向勝負できた鬼だが、現代ではそれができなくなったため、絡め手を使うようになったらしい。

 黒鬼もまた、例外ではなかった。

「あの女の人がいる場所が分かったわ。助けに行きましょう。罠に気を付けてね」

「罠か……う~ん、罠かぁ」

「ぼさっとしてないで、早く行くわよ! 鬼が目覚めたら大変だわ」

「は、はいぃ!」

 有栖達は急いで、待機所を後にするのだった。

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