今日は、仮装をし、お菓子を貰うイベント、ハロウィン。
ここ、争いの世界にもそれは存在し、盛り上がっていた。
そんな争いの世界の街に、一人の少女が来ていた。
黒い髪と赤い瞳の見習い魔女、アシュリーだ。
彼女はアシストフィギュアとして乱闘に参加しているが、今回は実体化して街に来ている。
「アシュリー……こういうのが……好き。でも……お菓子は……嫌い」
「残念ね。せっかくのハロウィンなのに、もったいないわよ」
「お菓子とか……ドレスとか……アシュリーらしくないから」
魔女の仮装をしたピーチが残念がる。
アシュリーは黒魔術系なので、お化けや悪魔などの怖いものを好み、逆にお菓子やドレスなどの可愛いものを嫌う性格である。
「まあ確かに、可愛いものや甘いものはアシュリーに合わなさそうだしね。
それなら、トマトと唐辛子をたくさん使った、ファイアフラワークッキーはいかが?」
そう言って、ピーチはアシュリーにファイアフラワークッキーをあげた。
「……アシュリー……食べられるなら……食べる」
アシュリーは、ファイアフラワークッキーを口にした。
その時だった。
「か……辛い……!!」
「どうしたの、アシュリー!?」
アシュリーの髪が白くなり、彼女を強い魔力が覆った。
ピーチはアシュリーが心配になったが、アシュリーは杖を振り下ろす。
次の瞬間、ピーチとアシュリーの間に、巨大な南瓜のお化けが現れた。
アシュリーは白い髪のまま、杖を振って南瓜のお化けを操っていた。
「まずいわ、早くみんなに知らせなきゃ!」
自分一人では止められないと悟ったピーチは、急いでマリオ達の方に向かった。
「どうしたんだ、ピーチ」
「かくかくしかじかで大変なの! 早くしないと街が大変な事になるわ!」
テレサの仮装をしたマリオが、慌てるピーチの言葉を聞いて、危機感を覚える。
「……とりあえず、俺はアシュリーを止める。念のため、リンク、カービィ、ピカチュウも呼んでくる」
「なる早でね!」
「あれが……アシュリーが呼んだ南瓜のお化けだな……」
人狼の仮装をしたリンク、テッドホーンの仮装をしたカービィ、ミミッキュの仮装をしたピカチュウが、
巨大な南瓜のお化けと対峙する。
アシュリーはあまりの辛さにパニック状態に陥っており、魔法が暴走しているらしい。
「とりあえず、アシュリーを気絶させればいいんだな?」
「その方がよさそうだ。いくぞ!」
「…………!!」
そう言って、リンクがアシュリーに突っ込んでいくと、アシュリーは魔法で大量の南瓜を飛ばした。
「ちっ、アシストフィギュアじゃないからいつもより魔法が強くなっているな!」
「…………!!」
巨大な南瓜のお化けは南瓜の形をした爆弾をカービィに投げつけた。
「危ねっ!」
リンクは盾を構えてカービィを庇った。
だが、巨大な南瓜のお化けは続けてカービィに爆弾を投げつける。
カービィは前に出て爆弾を吸い込み、ボムをコピーした。
「えーいっ!」
カービィは爆弾を巨大な南瓜のお化けに投げる。
「アイアンテール!」
続けて、ピカチュウは尻尾を硬くして巨大な南瓜のお化けに思いっきり叩きつけた。
巨大な南瓜のお化けはよろめいていたが、すぐに体勢を立て直した。
「くそ、まだ倒れないのかよ!」
「あれはアシュリーが魔法を使っている限り動き続けるわ。だから、彼女の魔法を解けばいいはずよ」
「だが、近づこうにも邪魔してくるし、アシュリーに全然近づけないぜ」
「私があの南瓜の動きを止めてみるわ。ピーチボンバー!」
ピーチはヒップアタックを繰り出した。
ヒップアタックが命中すると、ハート形の爆発が発生して動きが止まった。
その隙にリンク、カービィ、ピカチュウは爆弾、ボム、電撃で巨大な南瓜のお化けを足止めする。
マリオは三人が足止めしている隙にアシュリーの下へ向かっていく。
「…………!!」
アシュリーは今も魔法を使っていて、マリオが来た事に気づいていなかった。
「ちょっとだけ寝ててもらうぞ、アシュリー! ファイアボール!」
マリオが手から出した火球がアシュリーに命中すると、アシュリーは倒れ、白い髪が黒い髪に戻った。
そして、巨大な南瓜のお化けも消えていった。
「……う……ここは……?」
アシュリーは気絶していたが、しばらくして目が覚める。
「大丈夫?」
最初にアシュリーに声をかけたのはピーチだった。
そして、ピーチはアシュリーに謝る。
「ごめんなさい、アシュリー。あなたが辛いものも苦手だなんて知らなかったわ」
「……知らなくて……当然よ」
アシュリーは不機嫌そうにそっぽを向いた。
でも、と次にマリオが声をかける。
「せっかくのハロウィンだし、アシュリーも楽しんでくれよ! ほら、トリック・オア・トリート!」
そう言って、マリオが渡したのは、小麦粉と胡麻と抹茶で作った和風クッキーだった。
「お菓子……なの? でも……アシュリー……」
「アシュリーの口に合うように作ったんだが……お前、甘いものが苦手なんだろ?
こういうものなら食べられるかな、と思って作ったんだぜ」
「……分かった……食べる」
アシュリーは、マリオが作った和風クッキーを食べた。
すると、アシュリーの表情がほころんだ。
「美味しい……。これなら何枚でも食べられる……。
本当は……マンドラゴラ焼きが……食べたかったけど……こっちも……口に合うわ。もっと……ちょうだい」
「え……。他の人にも配る予定だが」
「チッ」
アシュリーは、もっと食べたかったのに……と舌打ちする。
「じゃあ、アシュリー、驚かす側にならないか?」
「トリック・オア・トリート、ってね! 魔法を使って、驚かしちゃいなよ!」
「驚かす……? うん……やりたい……。みんなを……魔法にかけたいわ……」
アシュリーはこくりと頷いた。
自分は、お菓子を貰うよりも、魔法をかけて驚かす方が好きだからだ。
「……行ってくる……」
「いってらっしゃい!」
マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ、ピーチに見送られ、アシュリーは皆を驚かすために歩いていった。
歩いている途中で、杖がレッドに変化する。
「アシュリー、幸せそうやなぁ」
「何よ……レッド……。別に……アシュリーは……」
「たまには自分の気持ちに素直になりぃな!」
「……楽しい。これでどう?」
「そうそう! ……って、アシュリー?」
「……」
無理に言われたと思ったのか、アシュリーは鋭い目でレッドを睨んでいた。
レッドは「後でお仕置きを受ける」と思い、震えながら杖に姿を変えるのだった。