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第1話 綻んだ結界

 争いの世界を支配しようとしたキーラとダーズの野望は、カービィ、シャドウ、ベルを中心にしたスマブラメンバーによって阻止された。

 キーラとダーズはマスターハンドとクレイジーハンドによって15000年の封印刑に処された。

 存在を消されなかったのは、せめてもの神々の慈悲と言えるだろう。


 それから数ヶ月後……といっても、争いの世界ではほぼ気にしなくてもいいが……。


「最近、結界が弱まってきているようだ」

「結界? ああ、そういえばそうだったな」

 キーラとダーズが起こした異変を解決した時、マスターハンドとクレイジーハンドはこの世界を守る結界を強めた。

 結果として、侵略者が来る事はなくなり、争いの世界は平和を保ち続けていた。

 しかし永遠というものは存在せず、結界は少しずつだが弱まっていた。

 そこで、マスターハンドとクレイジーハンドは、ある事を提案するのだった。


「スマッシュブラザーズよ」

「どうした?」

 マスターハンドとクレイジーハンドは、スマッシュブラザーズのメンバーを招集する。

 一番前にいたのは、テリー、ゲッコウガ、ガオガエンと、灯火の星異変で活躍したカービィ、シャドウ、ベルだった。

「最近、この世界を守る結界が弱まっているらしい」

「そうは思えないんだが……」

「いや、念のためだ。万が一結界が壊れたら、またこの世界が侵略されるだろ?」

「だから、君達で結界を確かめるんだ」

「確かに」

 キーラとダーズのせいで争いの世界が滅びかけたため、結界が強くなった。

 もし結界が壊れたら、今度こそ、この世界は終わってしまうだろう。

 それを防ぐために、マスターハンドとクレイジーハンドはスマッシュブラザーズを招集したのだ。

「後、それから、この世界には私が呼んでいないファイターが何人か残っているらしい」

「?」

「彼らも連れてきてくれると、ありがたいのだが」

 どうやらこのスマブラ屋敷に、また新たなファイターが来るらしい。

 結界の確認も兼ねて彼らを助ければいいとか。

「一体どんな人なのかなぁ? 可愛い子だといいね」

「くだらんな(本当は楽しみだがな)」

 カービィはワクワクしており、ゲッコウガも内心は楽しみだった。

「結界の確認に、ファイター探しか」

「またみんなで乱闘できるといいわね」

 シャドウと、パーティー紅一点のベルが呟く。

 どちらも非公認の身だが、その闘志は公認にも劣らない。

 周りが認めていれば、立派なファイターなのだ。

「結界は七つの結界石によって張られている。君達はそれに異常がないかを調べればいい」

「もし魔物が襲ってきても、君達なら大丈夫だろう」

 スマッシュブラザーズのやるべき事は、結界の異常を調べるだけ。

 特に大きな敵を倒す必要なんて、ないのだ。

 当然、スマブラメンバーは頷いた。

 この世界には、自分達にとって大切なものがたくさんあるからだ。


「それじゃ、行ってくるか!」

「その前に……これを持っていって……」

 マリオ達が行こうとした時、アシュリーが箒で飛んでくる。

 人との関わりを嫌うアシュリーにしては珍しい。

「これは、魔法試験管に肉釜? なんでだ?」

「アシュリーの住む世界は……誰にも渡さない」

 どうやら、その敵はアシストフィギュアまでも狙っているようで、アシュリーは許せないようだ。

「サンキュ、アシュリー」

「……別に」

「……」

 素直に受け取るマリオだが、シャドウは複雑な表情を見せていた。


「それじゃあ、行ってくるぜ!」

「いってらっしゃい……」

 こうして、マリオ達は再び、世界を巡る冒険の旅に出た。

 マスターハンドとクレイジーハンドも神界に去り、スマブラメンバーを見守る事にするのだった。


 しかし、その様子を見ていた人物がいた。

「あの結界さえなければ世界は我のものになる……。だが、今の我では結界に手は出せぬ……。しもべよ、代わりに結界を破壊してもらおう!

 クククク……スマブラメンバーの絶望に沈んだ顔が楽しみだ……」


「シャドウ、結局ずっと持ちっぱなしなのね」

「僕の手に合うからな」

 ベルはシャドウが持っている銃器を見る。

 拳銃、狙撃銃、アサルトライフル、それからロケットランチャー。

 戦いが終わったら片付ける予定だったが、自分の手に合い過ぎて持ち続けたという。

「まあ、あんたがそんなに気に入っているなら、私はどうこう言わないわ」

「……フン」

 飛び道具なら安全に攻撃できる。

 ベルはシャドウをそういう手段として考えていた。


「じゃ、早速行きましょう! まずは……リフーダ地方ね」

 ベルは最初の目的地を決める。

 リフーダ地方とは、ファイター達が拠点とするスマブラ屋敷がある地方である。

 ここに、結界石の一つが置かれているという。

 まず一行は、結界石を探すため、あちこちを歩き回った。

 ここには凶暴な魔物もいないし、もし襲ってきてもスマブラメンバーなら簡単に蹴散らせる。

 余裕さえ見せながら、一行は探索を続けた。


「あら、オクタロックじゃない」

 四人の目の前には、岩を吐き出す蛸、オクタロックが立ち塞がっていた。

 幸いオクタロックはまだこちらに気付いていない。

「ふんっ」

 ゲッコウガはオクタロックに気付かれないよう、迅速にオクタロックを攻撃する。

 不意を打たれたと感づいたオクタロックは、すぐに六人に攻撃を仕掛けた。


「えいっ!」

 カービィは落ちていたボム兵をオクタロックに投げつける。

 ボム兵は大爆発を起こし、オクタロックを吹っ飛ばすが、ギリギリで倒せなかった。

 テリーはじっくりと相手の出方を伺っている。

「どりゃあ!」

 ガオガエンはオクタロックに渾身の一撃を放つが、オクタロックにかわされる。

 反撃を受けそうになるも、何とか攻撃をかわした。

「ナイトメア!」

「カオススピア!」

 ベルは勢いよく鎌を投げオクタロックを切り裂く。

 シャドウは光の矢をオクタロックに飛ばした。

 オクタロックが口から岩を吐く。

「これくらい……防いじゃえば、きゃあ!?」

 ベルがシールドで防ごうとすると、岩がシールドを貫通した。

「何よ、これ……!」

「普通のオクタロックじゃ、まずあり得ない」

「気を引き締めていかなきゃな、バーンナックル!」

 テリーの炎を纏った正拳突きがオクタロックを吹き飛ばす。

 ゲッコウガとガオガエンは連携してオクタロックを集中攻撃する。

「くっ……!」

「ぐあぁっ!」

 オクタロックの強力な岩がシャドウとゲッコウガに命中。

 さらにもう一体がとどめを刺そうとしたが、シャドウが空間を歪めて攻撃を逸らした。

「何が何でも……通るんだから! スライス!」

「ライジングタックル!」

「DDラリアット!」

 ベルは勢いよく鎌を横に振り、オクタロックを真っ二つにした。

 テリーとガオガエンも続こうとしたがかわされる。

「えーい!」

 カービィはハンマーを振り下ろし、オクタロックをまとめて二体倒す。

 続けて、シャドウはゲッコウガとガオガエンが攻撃したオクタロックに拳銃を三連射して倒す。

 その後、ガオガエンのフレアドライブにより、オクタロックは全て倒れた。


「はぁ、はぁ……オクタロックってこんなに強かったっけ?」

 リンク曰く、オクタロックは岩を吐いてくるがそれ以外に大した力はない、雑魚のはずだった。

 しかし、体力が高く、岩の威力もかなり高かった。

 明らかに普通のオクタロックではなく、何者かの影響を受けている可能性が高い。

「だが……俺達はもう、瀕死だぞ……」

「そうだわ! アシュリーから魔法試験管を貰ったでしょ? あれを使えば?」

「それだ!」

 カービィとベルは、魔法試験管を使って、甘い薬や鋭い酸味のある薬、濃厚な甘みの薬を作った。

 アシュリーは甘いものは苦手だが、何故か薬は甘いものがよくできるらしい。

 それを飲んだゲッコウガやシャドウの失った体力が回復した。

「今は先に進みましょう、ファイターが待ってるわ」

「そ、そうだね!」


 敵を退けながら、カービィ達は結界石を探す。

「ねえ、なんだかちょっと寒気がしない……?」

 結界があるこの世界は、もうこれ以上強い魔物は出ないはずだ。

 しかし、現にカービィ達は凶暴化したオクタロックに襲われた。

 明らかにこの世界には、異変が起きている。

「ああ……想像したくないが、結界に異常が起きてるんじゃないか?」

「まさかな」

 テリーとゲッコウガがそんな事を考えていた時。


「な、何をするネ!!」

 向こうから、少女の声が聞こえてきた。

「あれは、ファイターの声か!?」

 シャドウはすぐに身構える。

 切羽詰まった声なので、何かに襲われている可能性が高い。

「マスターハンドはファイターもいるって言ったわ。早く助けに行きましょう!」

「もちろんだ!」

 一行は大急ぎで、少女を助けに向かった。


「キャァァ!」

 少女は目玉にたくさんの触手がついた魔物に襲われていた。

 灯火の星異変ではキーラとダーズのもとに向かうスマブラメンバーを苦しめた、土下座君である。

「よくも女の子に酷い事をしたわね! 容赦しないわよ!」

 そう言って、ベルは大鎌を構える。

 女性に対して触手を向ける魔物は、ベルは特に容赦しないのだ。

「……ていうかあんたは?」

「ワタシはミェンミェン! マスターハンドに招待されたケド、途中で魔物に襲われたアル!」

「なるほど、ミェンミェンっていうのね。ところで、この辺に結界石ってある?」

「結界石? うーん、罅が入った石を見たアル」

 もしかしたら、これが結界石かもしれない。

 土下座君を倒して結界石の様子を見るのが目的だ。


「アチョー!」

 ミェンミェンはそう言って腕を伸ばすが、土下座君は触手で攻撃を防ぎ彼女に触手を伸ばす。

「危ねっ!」

 テリーはミェンミェンを庇って触手攻撃を受けた。

 カービィ、ガオガエン、ベルは土下座君の攻撃をかわしながら、触手を攻撃する。

「はぁっ!」

「ふっ」

 シャドウの回し蹴りとゲッコウガの手刀が、効果的な一撃になったようだ。

「えいえいっ!」

 カービィはハンマーを連続で振り回し、シャドウは拳銃を三連射する。

 ミェンミェンも蹴り技で土下座君を攻撃した。

「ワタシの武器はアームだけじゃないアル!」

「受けなさい!」

 ベルは大鎌から闇の刃を飛ばし、土下座君の触手を切り裂いた。

「ぐぁっ!」

「パワーダンク!」

 土下座君はすぐに触手で反撃を繰り出すが、テリーが拳を土下座君に打ち付ける。

 カービィはストーンを使い、土下座君を押し潰す。

「とどめアル!」

「フレアドライブ!!」

 ミェンミェンのアームで吹っ飛んだ土下座君に、ガオガエンのフレアドライブがクリーンヒット。

 土下座君は空の彼方に飛び、星になるのだった。


「早く結界石を確認しましょう!」

 土下座君を倒した後、一行は急いで結界石の様子を見た。

 だが、既に結界石はバラバラになっていた。

「魔物が凶暴になったのは、これが理由だったのね……」

 結界石を守れずにはぁ、と落胆するベル。

 しかし、テリーはそんなベルに優しく手を置く。

「くよくよするなよ。ミェンミェンって子を助けたんだからそれでいいじゃないか」

「……そうね。他の結界石も無事だといいんだけど」

「それじゃ、ワタシも手伝うアル! ヨロシクネ!」


 闘うラーメン少女、ミェンミェンが仲間になった。

 果たして、残る結界石は無事なのだろうか。

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