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第3話 見習い魔導師と超能力者

 争いの世界の結界を構築する二つ目の結界石も破壊されていた。

 このまま放っておけば結界が消えてしまい、侵略者を争いの世界に許してしまう。

 それを阻止するべく、一行は次の地方、オラム地方に行くのだった。


「よし、これで大丈夫でしょ」

「サンキュ」

「……」

 ベルは魔法試験管でいくつか薬を作り、テリーとシャドウの傷を癒した。

 テリーは笑顔で感謝し、シャドウは無表情のまま。

「オラム地方は荒野と氷山があるわ。だから、二手に分かれましょう」

「ああ、そうだな」

「決める方法は……くじ引きで!」

「何!?」

 くじ引きの結果、荒野に行くのはシャドウ、ベル、ガオガエン、スティーブ、氷山に行くのはカービィ、ゲッコウガ、テリー、ミェンミェンに決まった。

 ちなみに、全員に目的を果たしたら自動で安全地帯にワープするようにセットしたアイテムを渡してある。


 まずは荒野に行ったシャドウ組の様子を見よう。

「ここはかなり過酷だな……。だが、問題ない」

「そざいも とれますしね」

 スティーブはつるはしで素材を採取しようとしている。

「私は死神だけど、ガオガエン、じめんタイプ苦手なのよね……」

「ああ……地面が揺れるのは勘弁だぜ」

 流石のガオガエンも弱点のタイプは苦手なようだ。

 砂嵐はだんだん強くなり、シャドウ達を襲う。

「いてて! 目が痛ぇ……」

「ゴーグルでもつけておけばよかった?」

「……まあ、な」


 荒野は砂嵐だけでなく、魔物も脅威だった。

 この場所で結界石を探すのは、容易ではなかった。

「みんな、飛ばされないように固まってろよ」

「かしこまりました」

 ガオガエンの指示で、シャドウ、ベル、スティーブは固まる。

 シャドウは嫌そうな顔をしていたが、「仕方ない」と呟いた。


 こうして四人が奥まで進んでいくと、茶髪を結った少女が、機械のような魔物と戦っている光景を見た。

 少女の近くには黄色い小動物がいて、少女が掛け声を言うと炎が飛び、吹雪が起きた。

 だが、その魔物はまるで応える気配がない。

「ボクの魔法が効かないなんて……! カーくん、まずくない?」

「ぐー……」

 カーくん、と呼ばれた小動物が恐怖で縮こまる。

 少女は何者かの攻撃をかわし続けていたが、やがて、限界が来そうになる。

「ダメだ、カーくん……ここで……」

「終わらせない!」

 すると、魔物に黒い丸が体当たりして吹っ飛ぶ。

 黒い丸はハリネズミの姿になると、銃を構える。

「キ、キミ、もしかして……シャドウ!?」

「動くな、仕留める」

 少女はシャドウを見て驚くが、シャドウは動じずに拳銃を一発撃つ。

 すると、魔物は勢いよく腕を振り下ろした。

 攻撃をかわすシャドウだが、もう一方の腕が命中し、シャドウは地面に叩きつけられた。

「……やるな……」

「シャドウ、大丈夫!?」

「助けに来たぜ!」

「おや ファイター ですか」

 遅れてベル、ガオガエン、スティーブが現れた。

 少女とカーくんは慌てて三人の後ろに隠れる。

「お願い、ボクと一緒にこいつをやっつけて!」

「了解!」

 そう言ってベルは、魔法弾が入った試験管を魔物に投げつける。

 攻撃を受けて怯んだ魔物に、シャドウと少女が光の矢を放つ。

「DDラリアット!」

 ガオガエンは思いっきり腕を振り回す。

 スティーブはつるはしで素材を掘り出し、いくつかのアイテムを作った。

「いたい」

 魔物が鋭い突きをスティーブに放ち、大ダメージを与える。

「まずい、ボクがヒーリングで……」

「それは後で使えばいい、カオススピア!」

 回復魔法を使おうとする少女だが、シャドウは少女の前に立ち、光の矢を放つ。

「炎や氷がダメなら、これでどうだ! ダイアキュート、ヘ・ヘヴンレイ!」

 少女は増幅呪文を唱え、強力な光線を放つ。

 魔物の動きは鈍って来たので、体力は残り僅かだ。

「とどめだ、DDラリアット!!」

 そして、ガオガエンがラリアット攻撃をして、魔物を戦闘不能にしたのだった。


「結界石は……」

 戦いを終えたベルは大急ぎで結界石の様子を見た。

 結界石には罅一つ入っておらず、無事だった。

 ようやくスマブラメンバーは結界石を守れたのだ。

「よかった、無事だったようね」

「無事って、どういう事?」

「実はかくかくしかじかでね」

 ベルが少女に事情を話すと、少女とカーくんは「えー!!」と驚く。

「つまり、このままじゃこの世界が滅んじゃうって事なの?」

「ちょっと違うけど、大体そうよ」

「そんなのボク、許さないよ! ね、シャドウ?」

「何故僕に振る」

 どうやらシャドウとこの少女は知り合いらしい。

 ガオガエンとスティーブが首を捻ると、少女はこほん、と咳払いする。

「あ、二人とも知らなかったみたいだね。ボクはアルル、アルル・ナジャ。こっちはカーくんことカーバンクル」

「ぐっぐぐー!」

「ボクがシャドウの事を知ってたのは、同じ世界に住んでたからなんだよ」

 少女、アルルとカーくんことカーバンクルがベル達に自己紹介した。

 アルルとシャドウが知り合いだったのは、同じ世界にいるからである。

「改めて、私はベル・クリーブ」

「おれはガオガエンだ」

「わたくしは スティーブです」

「……シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」

 シャドウ、ベル、ガオガエン、スティーブがアルルに自己紹介をする。

「よろしくね、みんな!」

「ぐっぐぐー!」

 アルルは満面の笑みを浮かべて、四人に手を伸ばした。

 次の瞬間、四人の姿はテレポートで消えた。


 一方、氷山に向かったカービィ、ゲッコウガ、テリー、ミェンミェンはというと。

「寒い……」

 こおりタイプに強いゲッコウガだったが、この寒さには耐えられないようだ。

「ああ、ここがこんなに寒かったなんてな」

「ブルブルスター並だよ……しかも、あそこ……思い出すだけでもっと寒くなるよ」

 カービィはブルブルスターでの冒険を思い出し、ただでさえ寒い空気がもっと寒くなった。

 事情を知らないミェンミェンは頭に?マークを浮かべた。

「どうしたアル? 寒いなら、ワタシのラーメンを食べればいいヨ?」

「そうじゃないよ、あそこの工場で潰されそうになったんだよ」

 詳しくは「こうじょうけんがく」で検索しよう。

「アナタの言い分は分かったケド、まずは結界石を探そうヨ」

「そうだったな!」

 氷山にも結界石はあると聞いていたので、それを探さなければならない。

 一行は寒さに耐えながらも、氷山を探索した。

 道中には魔物がいたものの、格闘技に長けたテリーとミェンミェンが前に出て簡単に倒した。

「ガオガエンがこっちに来れば、温まったのになぁ」

「仕方ないだろ、くじ引きだったんだから」

 ぶーたれるカービィをテリーは宥める。

 氷山を歩いているうちに、一行はソニックやシャドウと同じくらいの体格のハリネズミと、彼が戦っていると思われる魔物を発見した。

 大きな赤い身体に大きな角と、鬼を彷彿とさせる容姿だった。

 魔物の傍には、淡く光る石……結界石がある。

「あれって、結界石じゃない!」

「あの魔物と戦ってる奴が気になるがな」

 一行は結界石の様子を見るため、走っていく。

 吹雪が打ち付けて歩みは遅くなったが、スマブラメンバーは諦めずに進む。

 やがて一行は、やっとハリネズミと合流した。

「こいつはかなり強いぞ! あんたら、いけるのか!?」

「当たり前でしょ! 僕達はスマッシュブラザーズなんだから!」

 カービィ、ゲッコウガ、テリー、ミェンミェンは、ハリネズミの前に立ち、魔物を迎え撃つ。

「仕方ないな……俺も手伝ってやるからな!」

 ハリネズミもまた、彼らと協力する事にした。


「えいっ!」

 カービィは思いっきり魔物を蹴り飛ばす。

 ハリネズミは石を超能力で浮かせ魔物にぶつけた。

「ほっ、はっ!」

「ふっ」

 ミェンミェンが魔物を撹乱した後、ゲッコウガの会心の一撃が魔物にクリーンヒットした。

 そのおかげで魔物の手が緩み、テリーはそれを見逃さずにタックルする。

「えいっ!」

 ミェンミェンは腕で岩を掴んで魔物に投げる。

 岩は山なりに飛んでいき、魔物を押し潰した。

 魔物は怪力で岩を投げ飛ばし、ゲッコウガにぶつけて吹っ飛ばした。

「くっ……」

「サンキュ、後は俺がとどめを刺すぜ」

 そう言ってテリーは魔物に突っ込んでいき、腕に力を溜め、とどめを刺そうとした。

「パワーゲイザー!!」

 テリーが思いっきり拳をぶつけ、衝撃波を飛ばし、魔物を空の彼方に吹っ飛ばした。


「よし……結界石は無事のようだな」

 魔物を倒した後、テリーは結界石を確認する。

 結界石には罅が入っていなかった。

「俺を助けてくれてありがと。でも、あんたらは何をしてたんだ?」

「この世界の結界に異常がないかを調べてたんだ。結界は結界石で張られてたんだけど、そのうちの二つが壊されちまってな」

 テリーがハリネズミに事情を話すと、ハリネズミは理解して頷いた。

「そうだ! 君、ベルベルと一緒に行かない?」

「ベルベルって……それに、俺は『君』じゃなくてシルバー・ザ・ヘッジホッグだぞ」

 ハリネズミはシルバーという名を名乗った。

 彼はスピリットとして出会った事があるが、アルルと同じく非公認ファイターでもある。

「それはそれとして、とりあえず同行するぞ」

 シルバーは二つ返事でカービィの提案に賛成した。

「俺はゲッコウガ」

「俺はテリー・ボガードだ」

「ワタシはミェンミェン、ヨロシクネ!」

「よろしくな、みんな!」

 ゲッコウガ、テリー、ミェンミェンもシルバーに自己紹介をする。

 満面の笑みを浮かべたシルバーは、皆に手を伸ばした。


 そして、一行はテレポートで拠点に戻ってきて、今回の戦闘の結果を報告した。

「よかった、こっちも無事だったんだな」

「キミこそ無事で何よりだよ」

「ていうかおまえって、こっちに招待されてないはずじゃ……」

「そんなの気にしない、気にしない! 今は勝った事を喜ぼうよ!」

「ぐっぐぐー!」

 ガオガエンとアルルが明るく話す中、ベルは胸に手を当てていた。

 守れなかった結界石を、やっと守れたからである。


「マスターハンド、クレイジーハンド、待っててね。私……この世界を絶対に守るから」

 結界が破れたら、キーラとダーズに匹敵する脅威がこの世界に侵略してくる。

 それだけは絶対に阻止しようと、ベルは秩序の守り手、死神として誓った。

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