第4話 闇の者
二つの結界石の破壊を阻止する事に成功した一行。
次に一行が行った場所は、セレアン地方だ。
ジャングルと山地が広がり、砦や遺跡があるこの地は、冒険者がよく訪れる場所だ。
ベルとゲッコウガは、シルバーとアルルのヒーリングによって体力が回復した。
「二人ともありがとう」
「そんな~、困ってる人は放っておけないだけだよ」
えへへ、と頭を掻くアルル。
「その結界石ってのを守ればいいんだな」
「このせかいを まもる だいじなもの ですから」
アルルとシルバーなら、きっと結界石を守れる。
ベルとスティーブは、彼らを信じるのだった。
その頃、結界石がある場所では、二人の男が魔物を睨みつけていた。
どちらも、一歩も動いていなかった。
「どうやら、先に進ませる気はないようだな」
「そのようだ」
男はいかにも悪人といった風貌で、性格もそれに違わなかった。
魔物も、男を逃がすまいと睨みつけた。
均衡は、未だ崩れる様子はなかった。
「ここに結界石の反応があるわ」
その頃、ベル達は、結界石の反応を確認した砦にやってきていた。
砦にはたくさんの仕掛けと魔物があったが、勇気と力と知恵によって攻略していく。
一行が攻略しているのは、正しい色の玉を嵌めるものだ。
【紅一点の周りは何色?】
「これは……緑アル」
ミェンミェンが緑の玉を扉に嵌めると、扉はガチャリ、という音と共に開いた。
「漢詩の一節、万緑叢中紅一点の意味は、生い茂る緑の中に咲く赤い花を指すアル」
「へぇ~、勉強になったわ~」
「ベル、知らなかったアル?」
「私はアニメとゲーム専門よ」
そんなやり取りをしながら、一行は砦の奥に進む。
次の扉には、こんな文字が書かれていた。
【『電撃戦隊チェンジマン』のメイン五人にない色は?】
「う~ん……」
ほとんどがゲームの世界出身なので、ベルを除いて、う~んと頭を唸っていた。
一方、ベルは頭の中で何かを考えていた。
(確か、メイン五人はチェンジドラゴンの赤、チェンジペガサスの青、チェンジグリフォンの黒、チェンジマーメイドの白、チェンジフェニックスの桃……だったかしら。
手元にある玉は、赤、青、黄、白、黒だから……)
ベルはガサゴソと黄色い玉を取り出し扉に嵌めた。
すると、扉はガチャリ、という音と共に開いた。
「そうそう! 黄色が正解だったわ。この調子で進みましょう!」
こうして一行は砦の奥に辿り着いた。
そこには、目的となる結界石が置いてあった。
「あった! うんうん……異常なしね」
ベルが結界石を確認する。
結界石には罅一つ入っておらず、この辺に強力な魔物はいない。
後は、そのまま戻るはずだった。
「グガアアアアアアアアアアアア!!」
「な、何!?」
いきなり横の壁が壊れ、双方から巨大な竜が飛んできた。
さらに、二人の男もこちら側に走って来た。
「な、なんか怖そうアル」
「きをつけてください ちゃんと かまえて」
「わ、分かったアル!」
ミェンミェンは男を見て戸惑いながらも身構える。
「あんた達……セフィロスに、カズヤじゃない。どうしてくれるのよ!」
男はクラウドの宿敵、セフィロスと、闇の鉄拳カズヤだった。
半ば巻き込まれる形で、一行は竜と戦った。
「それーっ!」
ミェンミェンは飛び掛かって来た青い竜を思いっきり蹴り上げる。
カービィは赤い竜が吐いた炎を吸い込み、星型弾にして吐き出し赤い竜にぶつけた。
テリーは赤い竜に突っ込み、パンチを繰り出す。
「はなびですよ」
スティーブは作っておいた花火を爆発させ、青い竜を上空に吹っ飛ばす。
「グガアアアアアアア!」
「ちっ……! 死ね!」
カズヤは赤い竜から爪で攻撃を受けるも、すぐさま風神拳で反撃する。
青い竜が地面に叩きつけられた隙に、セフィロスの刀が青い竜を一閃した。
「バーンナックル!」
テリーは炎を纏った拳を青い竜に放つが、青い竜は空を飛んでかわし、反撃しようとするも、テリーはその場緊急回避でかわした。
赤い竜はセフィロスを鋭い爪で切り裂く。
「えい、えい、えい!」
カービィは短い手足で懸命に赤い竜を連続攻撃。
スティーブは赤い竜と青い竜に石を投げるが、両方ともスティーブの攻撃をかわす。
「ホイールキック!」
ミェンミェンはアームで逆さになり、空中にいる赤い竜を蹴る。
「ハアアアッ!」
カズヤの風神拳は、赤い竜にギリギリに命中。
セフィロスの刀は青い竜が上手く飛んでかわした。
「つぁ……こいつら、見た目通りにタフだな」
「それに、動きも素早いアル……。早めに決着をつけないと、ダメネ」
テリーとミェンミェンはそう言って竜を睨む。
「アチョー!」
「そらっ!」
テリーとミェンミェンは青い竜に渾身の一撃をぶちかます。
続いてカービィがハンマーを振り回して追撃する。
「おるすですよ」
「!?」
スティーブが赤い竜の懐に潜り込み、困惑させる。
赤い竜は混乱して、ミェンミェンに渾身の一撃を食らわせた。
「いたぁっ! 何するアル!?」
「もうしわけ ありません」
「ドリャァ!」
「いい顔だ」
カズヤは青い竜の攻撃を食らいつつも、風神拳で反撃した。
セフィロスは瞬速で近づき、赤い竜に刀を振る。
一度、赤い竜はセフィロスの攻撃をかわしたが、セフィロスはそれに対応して切り裂いた。
「その苦しむ顔は、私にとって最高だよ」
「うわ、外道だな……」
「ひどい ですね」
テリーは某会社の社長を思い出して不快になる。
スティーブは青い竜を感電させようとするが、青い竜はギリギリで彼の攻撃をかわした。
そこに赤い竜が現れ、スティーブを切り裂いた。
「よーく分かったヨ、でもワタシは逃げないアル!」
「ストーン!」
そう言ってミェンミェンは距離を取り、腕を伸ばして赤い竜を殴る。
カービィはホバリングした後、石に変身して赤い竜を押し潰した。
「露と消えろ」
セフィロスは刀を構えると、目にも止まらぬ早業で一瞬で八回も振るった。
正宗は非常に長い刀だが、それを素早く振る事ができるセフィロスの力にカービィとミェンミェンは驚いた。
「死ね!」
カズヤは一瞬だけ悪魔《デビル》になって拳を青い竜にぶつけようとするが、青い竜は見切ってギリギリで当たらなかった。
「ちっ……!」
「な、なんだかこのおじさん、怖いよ……」
カズヤの舌打ちを聞いて震えるカービィ。
「おじさん」という言葉はカズヤには聞こえなかったようだが、もし聞こえていたら間違いなく殺されていただろう。
カービィが恐怖している間に、青い竜は尻尾で六人を薙ぎ払う。
カズヤは両腕を構えて攻撃を防いだ。
「うわぁーっ!」
吹っ飛んだ五人は竜と距離が大きく離れてしまう。
リーチが長いミェンミェンとセフィロスは何とか攻撃が届くものの、それ以外はもう一度近付かざるを得なかった。
「私の攻撃は、これだけじゃない」
そう言ってセフィロスは、闇の球体を生み出し、竜を囲んで爆発させた。
闇属性の攻撃魔法、シャドウフレアだ。
攻撃を食らった赤い竜と青い竜は怯む。
「さあ、もっと恐怖しろ。命乞いを聞かせてくれ」
「俺は言いたくないがな、パワーダンク!」
テリーは高く飛び上がり、赤い竜に思い切り拳をぶちかました。
カズヤも悪魔《デビル》になって、拳を青い竜にぶつけた。
「あんた……悪魔だな」
「それは結構だ」
テリーとカズヤはお互いの顔を見た後、すぐに竜の方を向いた。
しかし、スマブラメンバーの猛攻を食らって竜の体力は残り僅かになっていた。
とどめを刺すなら、今かもしれない。
「恐怖を刻み込もう」
「いっけぇーーーーーっ!!」
セフィロスの刀と、カービィのファイナルカッターが、竜の鱗を真っ二つにした。
これにより、二体の竜は戦闘不能になった。
「やった!」
「グ……ウ……」
「オオオオッ」
二体の竜を倒す事ができて喜ぶカービィだったが、竜は最後の力を振り絞って結界石を切り裂く。
そして、結界石が砕け散ると同時に、二体の竜は霧になって消滅した。
「そんな……結界石が……」
セフィロスとカズヤは、まさしく悪魔のような非道な戦い方だった。
結界石が砕け散った事は、まるでどうでもいいというように。
「……結界石、壊れちゃったわよ。責任を取ってくれるの?」
「そんなものはどうでもいい」
「邪魔な奴を潰したからな」
「そんな!!」
この二人の魂が黒い事はベルにも分かっていた。
結界石を気に留めない事も、分かっていた。
だが、どうしてもベルはモヤモヤしていた。
「ねえ……二人とも、どうなの? このまま放っておいたら、この世界に侵略者が来るわよ」
正直、同行させていいのか、ベルは迷っていた。
結界石をどうでもいいと言い切ったこの二人を、一緒に連れて行くのか……。
ベルは迷いを捨てるかのように、二人に言った。
「侵略者は俺にとっては邪魔者に過ぎない。邪魔な奴は全て潰す。それだけだ」
「私も、邪魔な奴は切り捨てるだけだ」
二人はただそれだけを言った。
肯定もしないが、否定もしないという意味である。
「呉越同舟……ね」
「ああ……」
セフィロスとカズヤは、利害の一致という形だが、ベル達に同行する事になった。