第5話 炎と光
利害の一致という形だが、何とかセフィロスとカズヤが同行した。
砦にあった結界石は竜、セフィロス、カズヤの戦いで砕け散り、残る結界石は二つ。
ベルは、何としてでも結界石を守ろうとした。
「世界の異変解決に、あんた達を巻き込んでごめんなさい」
「何を言ってる、邪魔なら斬ればいいだけだろう?」
「……」
セフィロスとカズヤは、邪魔さえしなければ一応敵は倒してくれるらしい。
だが逆に言えば、少しでも邪魔をしたら始末されるという事もである。
「……特にカービィとアルルは、この二人には気を付けてね」
「「はーい」」
「ぐーっ」
ベルはカービィとアルルにそう注意した。
どうにも彼らは扱いにくい相手だが、だからといって無視するわけにはいかない。
こうして同行してくれるだけでも、ベルはありがたいと思っていた。
次に一行がやって来たのは、セレアン地方の山地。
ここの遺跡にも、結界石が存在するという。
「今度こそ、結界石を守って見せる……」
ベルは大鎌をぎゅっと握り締めていた。
彼女は世界を守る立場にいるため、カービィとアルルは彼女を密かに心配していた。
シャドウ、セフィロス、カズヤは自分には関係ないといった態度を取った。
山を登っていくと、遺跡が見えてきた。
「あの中に、結界石の反応があるわ」
遺跡の中には六つ目の結界石がある。
恐らく、ここも敵が狙ってくるだろうから、決して油断してはならない。
一行は身構えながら、遺跡の中に入った。
「あら、あなた達も遺跡を探索に来たんですね?」
一行が遺跡に入ると、剣を携えた赤いショートヘアの少女が立っていた。
「君は?」
「自己紹介がまだでしたね。私はホムラです」
少女はカービィにホムラと名乗った。
「僕はカービィ! 実は、結界石を探してて……」
「結界石でしたら、私についてきてください」
どうやらホムラは、結界石のありかを知っているようだ。
何が何なのか分からないまま、カービィ達はホムラについていった。
「こっちですよ」
ホムラは滑るように歩きながら、カービィ達を案内する。
「ねえねえ、ホムホム、大丈夫?」
「なるべく魔物に遭わないようにしてるから大丈夫」
「ていうかホムホムって……」
ベルがカービィのネーミングセンスに呆れつつ、ホムラの後について回る。
「この遺跡、どうなってるんだ……」
カービィが遺跡の壁に手を触れようとした瞬間、ホムラの姿が金髪碧眼の少女になり、素早く剣を壁に向かって振った。
すると、カービィの目の前に、切り刻まれた矢が落ちてきた。
「危なかった……。カービィ、あと少しで串刺しだったわよ」
「ごめんなさい……あれ? ホムホムの姿が違う?」
「これは私のもう一つの姿、ヒカリ。光は一番速いものだから、不意打ちにもある程度対応できるわよ」
探索の間はしばらくこのまま、とヒカリは言った。
一見すると華奢な少女に見えるが、遺跡の罠に対応できたところを見る限り、相当な手慣れである事は確かだろう。
「ヒカりん、強いんだね」
「まあ、ヒカりんだなんて、可愛いニックネームね」
カービィのネーミングセンスは、ヒカリを笑わせるほどだ。
彼女がいれば、遺跡の探索は捗るかもしれない。
そして、結界石も守れるかもしれないと、ベルは一安心するのだった。
こうして一行は遺跡で魔物を避けつつ、罠も避けながら進んでいくと、結界石を発見した。
「あった!」
結界石に異常はなかった。
遺跡までに、あの魔物の群れは追ってこなかったようだ。
「ここは罠があるからきっと魔物は来ないでしょう。さ、みんな、帰るわよ」
「おっけー!」
一行が帰ろうとすると、どこかからドスン、ドスンという足音が鳴った。
「な、何!?」
一行が慌てていると、彼らの背後に、巨大な鉄の身体をしたゴーレムが迫った。
そして、ゴーレムは腕を振り下ろそうとした。
「危ない!!」
ヒカリはホムラに姿を変え、ゴーレムを炎の刃で切り裂く。
このゴーレムは炎属性に弱いらしく、身体の一部が溶けた。
「こいつは、この遺跡の守護者みたいですよ!」
「結界石を見に来ただけなのに、なんで俺達に襲ってくるんだよ!」
「この遺跡に入った者には目的が何であっても容赦しないでしょう……私達のように!」
そう言って、ホムラは戦闘態勢を取る。
ゴーレムは目を光らせて一行を睨み、ここから生かして帰さんと仁王立ちする。
「仕方ないな……こいつを倒して帰るぞ!」
「アナタが容赦しないなら、ワタシも容赦しないアル!」
「この鋼鉄の身体……切り裂いたら、どんな悲鳴が聞こえるだろうな」
「任務開始」
「僕の邪魔をするならば、消え失せろ」
シャドウ、シルバー、ゲッコウガ、セフィロス、ミェンミェン、ホムラは、鉄のゴーレムに戦いを挑んだ。
「やるからには全力アル!」
ミェンミェンは腕を伸ばし、ゴーレムに渾身の一撃をぶつけようとするが、ギリギリで攻撃は逸れてしまう。
シルバーは落ちていた石を念力で浮かせ、ゴーレムにぶつけてダメージを与えた。
「はぁぁっ!」
ホムラは渾身の力を込めてゴーレムを切り裂く。
セフィロスとゲッコウガも続こうとしたが、ゴーレムは両腕を交差させて攻撃を防いだ。
「ギ ガ ゴゴゴ」
「きゃあああっ!」
ゴーレムは攻撃を防いだ後、ホムラに思い切り渾身の一撃を放つ。
避け切れずに大ダメージを受け、ホムラは地面に叩きつけられた。
「大丈夫か、ホムラ! ヒーリング!」
シルバーは急いでホムラに駆け寄り、ヒーリングの超能力でホムラを治す。
「あ、ありがとう……」
「いいって事よ!」
「ギ ガ ゴゴゴ」
「ほう……?」
ゴーレムは腕を思い切りセフィロスに振る。
この一撃でセフィロスは重傷を負ったはずだが、セフィロスはまだ立っていた。
「この程度で私を倒したとでも思っていたのか」
そう言ってセフィロスはゴーレムを刀で切り裂く。
続いてシャドウはホーミングアタックを繰り出し、ゲッコウガはかげぶんしんで分身を作った。
「こいつは鉄でできているな……。ほのおタイプが弱点のはずだ」
「炎なら私に任せて、フレイムノヴァ!」
ホムラが力を灼熱の炎に転化し、刃に宿らせてゴーレムを斬りつける。
炎に包まれたゴーレムは苦しんでいるのか暴れる。
ゲッコウガの言う通り、炎属性が弱点のようだ。
「ふっ、はっ、食らえ」
シャドウは拳銃を連射してゴーレムを攻撃し、ゲッコウガは分身と共にゴーレムを手刀で攻撃。
セフィロスとホムラもゴーレムを連続で切り裂く。
「……なんだか、この男の人から、邪悪な力を感じます……」
ホムラはセフィロスを見て若干震えるが、すぐに表情は真剣になりゴーレムを睨む。
ゲッコウガの分身とホムラの炎の刃がゴーレムを追い詰め、シルバーもサイコキネシスで追撃する。
「結界石は、あんたには渡さないぜ!」
「渾身の一撃、受けるアル!」
ミェンミェンの渾身の一撃がゴーレムに命中し、ゴーレムの身体に罅が入っていく。
「これでとどめだ!」
シャドウのパンチがゴーレムに命中すると、それが致命傷になり、ゴーレムは倒れようとした。
しかし、ゴーレムは最後の力を振り絞り、結界石目掛けて腕を振り下ろす。
そして、結界石とゴーレムは砕け散ってしまった。
「……」
また、結界石を守れなかった。
ベルは最早、何も言わなかった……いや、何も言えないといった方が正しいだろう。
そんなベルの事情を察したホムラは、優しい口調で言った。
「……この人が落ち込んでるから、私が代わりに事情を話しますね。
私とヒカリは新たなる挑戦者だったんですが、スマブラ屋敷に来てから早々に、結界石を探す任務を言い渡されました。
すぐに見つかりましたが、ゴーレムに見つかり、私は入り口に戻らざるを得ませんでした」
「結界石のありかを知ってたのは、それが理由だったんだな」
「はい。残念ながら結界石は壊れてしまいましたが、ゴーレムを撃退する事はできました。これも皆さんのおかげです」
そう言って、ホムラはぺこりとお辞儀する。
しかし、ベルはまだ落ち込んだ様子だった。
「……大丈夫よ。侵略者を撃退すれば、全てが終わるわ……」
ホムラはヒカリになり、優しくベルに声をかける。
秩序の守り手という重圧に押し潰されるベルの荷物を少しでも軽くするために。
「……ベルベルのためにも、僕、頑張らなきゃ」
カービィもまた、ベルを守りたい、という決意が芽生えるのだった。