第8話 これからも平和な争いを
争いの世界を侵略しようとしたゼートは敗れ消滅、世界は再び平和を取り戻した。
異空間は消え、ベル達は元の場所に戻っていく。
「これで終わったわね……」
「ああ……」
「みんな、ありがとう」
ゼートはキーラとダーズに並ぶ強大な力を持っていた。
しかし、それだけで諦めるスマブラメンバーではない。
メンバーの協力があったからこそ、ゼートを倒す事ができたのだ。
それをベルとソラ、そしてカービィは実感する。
「見て、魔物が撤退していきます!」
「本当だ……」
ゼートが敗れた事で、彼が率いていた魔物は次々と撤退していった。
ホムラは魔物を見ながら、指を顎に当てて考える。
「もしかしたら、この魔物の群れ……ゼートに操られていただけかもしれません」
「その証拠は?」
「邪悪な気配を全然感じませんから。……魔物にも、良いと悪いはいるのですね」
ゼートが世界征服のために魔物を操ったならば、彼が消滅して正気に戻るのは当然だろう。
ミェンミェンは、魔物はこれ以上襲ってこないと一安心するのだった。
「とにかく、魔物はみんないなくなった。早くスマブラ屋敷に戻ろうぜ」
「ああ……」
こうして、ゼートを止めるために戦ったスマブラメンバーは屋敷に戻っていった。
「ただいま!!」
「「「おかえり!!」」」
真っ先に一行を出迎えてくれたのは、マリオ、リンク、ピカチュウの三人。
彼らはスマブラメンバーが無事に帰って来るのを信じて、屋敷で待っていたのだ。
「俺達は信じてた、お前らが戻ってくるって!」
「魔物も元凶も強かったんだろ? でも、お前らなら勝てるって思ってた」
「繋がりがあるからこそ、スマブラメンバーはどんな敵にも立ち向かえるんだな」
「……ああ」
彼らは自分達だけでなく、スマッシュブラザーズという絆も信じてくれた。
それが、待っている彼らの原動力となっただろう。
「シャドウ、シルバー、アルル! お帰り!」
ソニックは、無事に戻って来たシャドウ、アルル、シルバーを快く出迎えた。
この三人は非公認だが、少なくとも個々の皆は、彼らをファイターとして認めている。
「ああ! ちゃーんと戻って来たぜ!」
「ばっちぐー! ……ってこれは違ったか」
「……」
異なる振る舞いを見せる三人。
それもまた、彼らの個性であるため、ソニックは彼らを尊重した。
「ただいま、シュルク」
「お帰りなさい」
ホムラとヒカリを出迎えてくれたのは、並列世界に住んでいるシュルク。
彼女の後ろには、ホムラと契約しているレックスの姿が浮かんでいた。
「私達の事、ちゃんと信じてましたよね?」
「もちろんだよ。ね、レックス?」
「ホムラとヒカリが負けたら、俺も死んじゃうところだったよ」
「まあ、レックスったら」
レックスとホムラの掛け合いは、シュルクにとって微笑ましい光景だった。
彼らを見たシュルクは、幼馴染を思い出し、ふと、寂しげな表情になった。
「どうしたアル?」
「あ、うん、何でもないよ」
「クラウド……また、奴と戦いたい」
「……」
セフィロスとカズヤは二人とも、腕を組んでバラバラの位置に立っていた。
やはり、悪人同士というのは、気が合わないものかもしれない。
しかし、それでも彼らは、スマブラメンバーとして、ファイターとして認められているのだ。
「つぎは なにを つくりましょうか」
スティーブは相変わらず、何かを作ろうと、張り切っていた。
「……」
「……」
「なんか、お前と初めて会った気がしないんだよな」
「あ、それ、今、同じ事を考えてたよ」
ソラとパックマンは、お互いの顔を見つめている。
二人は知り合いのようだが、お互いにぼんやりとしか覚えていなかった。
「……さて、あの両手袋はどうしたのかしら」
ベルは何故か、大鎌を持ちながら、マスターハンドとクレイジーハンドを待っていた。
右足をトン、トンと地面につけ続けており、表情も、心なしかイライラしているように見える。
「おや、みんな、お帰りなさい」
「無事に戻って来たみたいだね」
しばらくすると、マスターハンドとクレイジーハンドが姿を現した。
真っ先にベルは、彼らのところに向かう。
「ねえ、あんた達。結界を確認するだけでいいって言ったでしょ?」
「ああ……言ったが……」
「魔物と侵略者がいたんだけど」
ベルは二柱(神はこう数える)に率直に報告した。
結界を確認するだけの仕事だったのに、魔物と侵略者が襲ってくるなんて、ベルは思っていなかったからだ。
「あんた達は、結界が弱くなっていても、侵略者が来る事を想定してなかったの?」
ベルは結界の調査に行こうとした時、両手袋が言っていた事を思い出す。
―最近、この世界を守る結界が弱まっているらしい。
―万が一結界が壊れたら、またこの世界が侵略されるだろ?
「神に二言はないわ。どうして結界が弱まったの? どうして侵略者が来る事を知らなかったの?」
ベルは両手袋に結界が弱まった理由を問いただす。
もしかしたら、侵略者にやられていただけかもしれないとベルはこの時、思っていた。
「……実は、一週間に一回行う結界石の確認を、四週間も忘れてしまっていたんだ」
「別の世界の神に会う日もあったからな」
彼らの言葉から、結界が弱まった理由が、ついに判明した。
マスターハンドとクレイジーハンドが侵略者にやられていたからではなく、結界の確認を怠っていたからだった。
彼らの言葉を聞いたベルは、カービィ、シャドウ、テリー、ソラに手招きをして呼び出す。
そして、にっこりと満面の笑みを浮かべた……ただし、目は笑っていないが。
「うふふ……分かってるわよね……」
「なんだ、お前達……?」
「どうしたんだ、その目は……?」
「地獄に落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
カービィ、シャドウ、ベル、テリー、ソラは両手袋に向けて、スマッシュ攻撃を放った。
「罰として、結界石の修復を“あんた達だけで”しなさいね」
「「はーい……」」
こうして、ベル達に制裁を受けた両手袋は、結界石の修復作業を行う事となった。
攻撃を受けてボロボロだったため、まずは一旦、傷を癒すために異空間に戻った。
「それにしても、ここも大分賑やかになったわね」
ベルはスマブラ屋敷に新たにやって来た八人、正確に言うと九人のファイターを見守っていた。
ミェンミェン、スティーブ、セフィロス、ホムラとヒカリ、カズヤ、ソラ、そして非公認だがアルルとシルバー。
苦労したが、連れてきた喜びはひとしおだった。
「結界をきちんと張り直したら、今度、彼らと一緒に乱闘しようかしら」
そう言って、ベルはソファに座り、今回の戦いの疲労を取るのだった。
これからも平和な争いを。
それが、スマッシュブラザーズの願いである。